2007年に700本のピノ・ノワールを植栽したのがワイン造りの始まりです。その後、メルロ、シャルドネ、バッカス、ミュラー・トゥルガウと植栽してカベルネ・ソーヴィニョンとシラーを試験栽培しています。栽培は、化学肥料は一切使用せず、有機質肥料や微生物資材などを少量使用しています。また、農薬は、除草剤は一切使用せず、すべて手作業で除草や草刈りをしています。病気や害虫などへの対応は天候や生育状況を見ながら過度にならないよう適切な回数の農薬を使用しています。昨年(2021年)、ピノ・ノワールで無農薬栽培の試験を始めました。今後、この試験区の結果を見ながら、病害虫に抵抗力のある品種から徐々に無農薬栽培を導入していく予定です。
ぶどう栽培は、無経験からのスタートでしたので、困難を極める場面も多々ありました。とにかく生育過程で分からないことばかりでしたが、人参栽培などのノウハウを参考にしながら総合的に課題を解決していき、近年は、ぶどう栽培の篤農家の方たちとのつながりの中で、丁寧な指導をいただきながら、栽培技術の向上を図って目標とするぶどう栽培に近づいています。この地域で山ぶどう系以外のぶどうを栽培するには多くの労力がかかります。冬の間の厳しい寒さから樹を守るため12月になると樹一本、一本に手作業で雪をかけて凍害から守ってあげなければなりません。一万本近くある樹に雪をかけ終わってほっとしても暖気が来たり、雨が降ったりして全部融けることもあります。その都度、また、雪のかけ直しをして樹を寒さから守ります。その結果、初めて植えたピノ・ノワールは16年経っても元気に育ち、良質なぶどうができています。畑は、扇状地にあり石が至る所にあります。ぶどう栽培で大事な水はけにはもってこいの条件です。ワイン造りは農業だといわれるように、原料となるぶどうがワインの出来の70~80%くらいを占めることになります。
ぶどうを栽培して10年目の2016年、自前のワイナリーを開設しました。それまでは委託製造でワインを造って販売していました。委託製造は6年間行い、その間に取引店も増えて、自社ショップでの販売も行って一歩ずつ積み上げてのワイナリーの開設でした。ワインの製造は、野生酵母で発酵させて亜硫酸塩の使用は瓶詰め時のみ基準の20%ほど使用して無濾過で造っています。ワイナリーは、築50年ほどの旧玉ねぎの貯蔵庫、のちに人参の選果場を利用して作りました。ワイナリーは多額の費用がかかると聞かされていましたが、建物があるのは大変助かりました。樽は、ブルゴーニュなどで使っていた古樽を使用しています。ワイナリー内の温度コントロールは、冬は床暖、夏は、豊富に流れてくる天然水を使って室温を下げる取り組みを始めています。 現在、ワインのアイテム数は十数種類あり、今後もさらに増える予定で多品種少量生産です
醸造責任者 菅井 伸一